ヘッドフォン・レヴュー




Stax SR-Λ


昔使っていた物で、今は有りません。その先に父がΣを買っていたのですが、ちょっと聞いてみたその音が印象的だったのを憶えています。

20数年前の学生時代、東京での下宿生活なので、スピーカーから音をそう出すことも出来ず、音楽はヘッドフォンで聞くのが中心でした。最初はエレガを使って居たのですが、スタックスの価格が安くなったΛが出たのを知り、すぐ秋葉原に買いに行きました。

私のΛはシリアルナンバーが10でした。その頃から現在まで、かれこれ20年ほどずっとスタックスのヘッドフォンの愛用者です。音域全体が非常に素直で伸びやかな感じで、誇張無く繊細さも持ち合わせた本当に素晴らしいヘッドフォンです(スタックスではイヤースピーカーと呼んでいますが)。

そのΛは1年程すると(使いすぎたかも)、左右のバランスが悪くなったので、たまたま下宿が当時のスタックスの近くだった事もあり、本社に修理に持って行く事にしましたが、住所を頼りにして行ってみて驚きました。

昔の事なので記憶違いも有るかも知れませんが、当時のスタックスは何だか凄い大きなお屋敷の中に有った様に思います。都心にありながら大変な敷地、木が生い茂るそのお屋敷の木造の離れにΛを持っていった様に、おぼろげながら記憶しています。本当に個人宅(古い大きなお屋敷)の研究所って感じでした。スタックスはそれからすぐに住所が変わってしまいましたが、、




Stax Lambda Nova Signature


スタックスではその後、最初のΣやΛから、バイアス電圧を上げた、所謂PROバイアスのヘッドフォンが出ました。それから暫くして、スタックスの経営危機を耳にするようになり、「手に入らなくなる前に」と言うことで買ったのがこの機種です。

先のΛはスピーカー出力をトランスで昇圧していましたが、真空管を出力段につかった専用アンプとのセットで買いました。高かったです。

聴いての印象は先のΛとあまり変わりません。確かにPROバイアスになって分解能がアップした様に思いますが、音楽のなり方などの差は、余り感じませんでした。しかし、この所他のヘッドフォンを色々試してみるに及んで、改めてスタックスのヘッドフォンの良さを認識した次第です。どんな音楽でもOKですが、静かな女性ヴォーカルなどでは、試聴を忘れて聞き惚れてしまいました。

真空管使用のアンプの方はとても優秀なのですが、いかんせん真空管使用のせいで、どうしてもウォーミングアップの時間が若干必要です。半導体のアンプでもウォーミングアップは必要でしょうが、真空管の方が差が激しいです。最低30分は必要なのが難点です。

一旦は営業を止めたスタックスも、幸いにして有限会社となって素晴らしいヘッドフォンを作り続けてくれています。「良いヘッドフォンを」と思う方には、迷わずスタックスの製品を勧めます。スタックスに関しては、安いのと高いのにそれほど差が無いように思うのは、私だけでしょうか??




Stax SR-Σ


ヘッドフォンはどうしても頭の中心に音像が広がるのですが、私は昔からどうもそれが気になっていました。そう言うわけで、ずっと昔テクニクスからヘッドフォン用のアンビエンスコントローラーが出た時にはすぐ買ってみましたが、単にぼやけて音が悪くなるだけで、使い物にはなりませんでした(当然スタックス以外のヘッドフォンで使用)。

昔聴いたΣの音場感が気になっていたので、オークションでΣを結構な値段で買ってみましたが、これが本当に良いです。スタックスの繊細な音にはこういう自然な音場感がとっても似合っていると思います。

シグネチャはプロ・バイアスで、こちらの方が音が良いのでしょうが、私にはこの昔のΣの方がずっと好ましいです。同じプロ・バイアスのΣPROも有ったのですが、今は買えないのがとても残念です。現在のスタックスのラインナップに、Σタイプのヘッドフォンを是非復活させて欲しいと思います。


Stax SR-Σ改 SR-ΣPRO仕様


先のΣは上述の通り、最近ネットオークションで買ったのもですが、それがとても良かったものですから、ついつい調子にのってオークションでΣをもう1個落札してしまいました。

でもこちらは、ハズレ、片方ユニットの中域が殆ど出ていない代物だったのです(キャンセル出来なかった)。一番最初に買ったΛの例にも有るように、コンデンサタイプのユニットは経年変化でレヴェルが下がってしまう事が有るようです。

先のΣは大丈夫でしたから一概には言えないと思いますが、やはり中古品には気を付けた方が良いみたいです。片方が死んでいるこのΣは、「あーあ、保守部品か」と思っていたところ、現スタックスで修理をしてくれる事になりました。

ただし、オリジナルの部品は既に無いので、そのかわり何と!、現行の404の発音ユニットを用いたPRO仕様です。修理に出して1週間、現在のラインナップには無い、旧ΣPROよりも進化した最新のΣとなって帰ってきました。

しかし、本当に、スタックスのその製品に対する取扱いには、全く頭が下がる思いです。普通ならば、「古い商品の為修理不能」の一文で片づけられる所ですし、私もてっきりそう思っていました。もとより、「ヘッドフォンで良い音を求める」と言えばスタックスで間違いはありませんが、今回の事で、「まづはスタックスの物で間違いなし」と、更にその想いを強くしました。

願わくば、私のような愛用者に、いつまでも今の様に良い製品を提供&保守していただきたいと思います。有り難うございました。




AKG K1000


この機種は随分前から気になっていたのですが、実際に聞いたこともないし、評論もあまり聞いた事が有りませんでした。

HDA100を探して秋葉原のヤマギワに行った時に、このK1000を実際聞いてみることが出来ました。明るくクリアーで明快な音色、自然な音場、いっぺんで気に入ってしまいました。

価格は約10万!、一旦店を出た後もずっと気になり、その内「あまり売っているのを見たことがないし、他では買えないだろう」と思いなおし、数時間後店に帰り当初買うつもりも無かったK1000を買ってしまいました。(後で調べると、インターネットで外国から買うと、あと2、3万円安く買えましたね。)

このヘッドフォンは、アンプのスピーカー出力をそのまま使うタイプです。驚いたことに能率がとても低く、(耳元で鳴らしているのに)普通のスピーカーを聴いているよりかなり多くの出力が必要になります。

で、私はこのヘッドフォンが大変気に入っています。やり過ぎじゃないかと思う位の明晰さ(それでいても充分クラッシック音楽も聴ける)、フルオープンな気分の良さ、まるでJBLタイプの優秀なスピーカーを耳元でならしている感じです。(まぁ実際その通りなんですけど)

正直当面の所、ヘッドフォンは、このK1000とスタックスが有ればあとは必要なし、と言う感じです。

ただこのヘッドフォンには一つだけ大きな欠点がありまして、それは暫くかけていると頭が痛くなることです。ご覧のようにK1000は耳の少し上の頭にパッドを押し当てて全体を保持しています。で、これがちょっと強くて、時間が経つとパットがあたる所が痛くなって我慢できなくなってしまうのです(私は30分ぐらいしかもたない)。押さえる力が弱いと、不安定だろうし、難しいところですけど、本当にどうにかしてもらいた所です。




Sennheiser HD600


どういう訳だか、いきなり各種ヘッドフォンに興味が出てきて(それまではスタックで充分だった)、色々見聞きしていると、殆ど全員がゼンハイザーのHD600をほめています。HDA100はいくら待っても手に入らないし、早くSAECのヘッドフォンアンプを聴いてみたいしで、HD600を買ってみました。

で、これは流石に良いです。スタックスの様に特に帯域が広大と言う気もしませんし、特に繊細な音でも有りませんが、とても良い「音楽」を聞かせてくれます。とにかく音がとても音楽的、弦などが本当に美しく響きます。どちらかと言えばクラッシック向きです。

私は音漏れなど気にしませんから、基本的に圧迫感のないオープンなヘッドフォンを好んでいます。このHD600は耳を覆うタイプですが、思っていたよりも実際の装着感はかなり良いです。

K1000で頭が痛くなってしまった、スタックスは専用アンプのウォーミングアップが待てない、と言うときに良くHD600を使っています。聴けば聴くほど良いヘッドフォンだと思います。ダイナミック型ではナンバー1でしょう(K1000は別格)。




Panasonic HDA-100


雑誌で、「100kまで再生可」とか読み、それまでスタックスで満足していたのですが、いきなり興味を持ったのが、最近ヘッドフォンに凝ってしまった発端かも知れません。

「これで悪いわけはない」、と思い込み、即座に買おうとしたのですが、同じ様に思った人も多いらしく、何処に行っても売り切れで、その入荷までの1ヶ月半に、結局K1000とHD600を買ってしまったという訳です。

で、やっと届いたHDA100を聞いてみて、、最初は正直「なんやこれ」って感じでした。高域まで音はちゃんと出て居るんでしょうけど、何というかHiFi感が有りません。それに艶っぽさとか、生命感とか、音楽に実体感がまるで伴わない感じです。

でも、暫く聞いていると耳も馴れてきたのか、良いところもだんだん分かってきました。ロック系のちょっとうるさめのポピュラー音楽なんか聞きますと、素直な感じでなかなか感じ良く聴けます。このヘッドフォンは、ポピュラー音楽用、本当の所はDVD映画向けなのでしょう。確かに悪くは無いヘッドフォンなのでしょうが、クラッシック音楽むきではありません。

このヘッドフォンは、かけていても殆ど疲れません。軽いですし、耳がオープンですからとても楽です。かけ心地はなかなかよいです(非常に良いと言えます)。やっぱし、長時間DVD映画向けなんでしょう。




SAEC HP-2000


SAECのヘッドフォンアンプです。ヘッドフォンで聴いたときの音場を改善するテクノロジーを組み込んであるらしいです。先にも書いた通り、私は昔からそういう点が気になっていますので、この手の謳い文句にはとても弱いです。

ただ定価が11万円しますので、普通ではおいそれと買えない所ですが、半額近くでオークションで出ていたので買ってしまいました。

HDA100に目を付けたのは、元はと言えば、このヘッドアンプにふさわしいヘッドフォンが欲しかったからです(当然スタックスは使えないから)。

で、HDA100なりHD600を繋いでの、その音場改善の効果ですが、半ば予想通り、「はっきり言って、そんなもの無くても良い」です。大昔に買った、アンビエンスコントローラーとどう違うのかどうも良く分かりません。単に音がぼやけて、ノイズ感が増えるだけです。最も個人差があるでしょうが、、

その他に低域ブーストの機能も有るのですが、こちらは効果をいれると本当にノイズが増えてしまうと言う、困ったさんです。

音場改善のほうはヘッドフォンによってもちょっと違いまして、音楽を聴かせるタイプのHD600には、全く相性が悪いですが、HDA100でポピュラーなどですと、まぁまぁそれなりに聴けないことはありません(別に無くても困らない程度ですが)。

買う前から、「この手の付加的機能が役に立たなくても、最低ヘッドフォンアンプとしては使えるだろう」と思っていましたが、はたしてその通りになりました。ただ、ヘッドフォンアンプとしてはなかなかと言うか、かなり良い物だと思います。(価格を考えなければ、です)

このヘッドフォンアンプにあった、ウルトラゾーネと言うヘッドフォンもある由ですが、もうそこまで投資する気にはなりません。