地方コンサート批評
ヴィクトリア・ムローヴァ
ヴァイオリン・リサイタル

1996年11月6日、サントリーホール


先に報告をしたキーロフオペラを聞きに行った次の日、やっぱり東京に居ることになって、この日も急遽夜コンサートに行くことにしました。サントリーホールでムローヴァのリサイタルが有るというので行きました。

サントリーホールに入るなり、支配人からと言うチラシを手渡されました。内容はアヴァド指揮の演奏中に携帯電話のベル音が会場に響きわたった由。私は、別にアヴァドのコンサートでなくても、コンサート中に携帯電話をならす様な奴は、殴りまくった上即刻退場させるべきと思いますが。

さすがに東京では聞きませんでしたが、徳島のコンサートでは未だに時計のピピと言う時報の音が時々します。あんな腕時計まだ使ってて、音をさせて喜んでいる人、まだ居るんだぁ、と呆れてしまいます。


さてムローヴァですが、CDを何枚か買いまして演奏も聴いてはいます。でもどうも面白くない演奏で、私は好きにはなれませんでした。一般的評価はかなり有るようなので、実際に聞く演奏はどうか、また本当に美人なのか、確かめたい気がありました。

プログラムは以下の通りです。


例えば私の経験として、ヴァイオリンリサイタルなどは、一流の演奏家でも最初の1曲ぐらいはまだあまり調子が出なくて切れも悪いのですが、だんだん熱が入ってきてヴァイオリンが音楽の流れと一体となった様に音を紬だしてゆくものですが、ムローヴァの演奏会にはあまり熱をはらんできた、とかの印象は特にはありませんでした。

やっぱし、CDで聴いた演奏と良く似ていて、これと行って非の打ち所無い演奏なのですが、聞いていてわくわくさせられる所がなんにもない、いわば「面白くない演奏」でした。ヤナーチェクのソナタなどは、私の大好きな曲なのですが、ちゃんととても巧く演奏しているのですが、どうも与える印象が弱いのです。え、これが、この曲だった?と思うくらい。でもこれは、はっきり言って、半ば以上が「私との相性」の様な気がします。

中で一番素敵だったのが武満の曲。この曲などは、「響きと、音色で勝負」って所がありますから、その分とても素敵でした。現代音楽には、音楽進行自体にわくわくさせる要素が大ですから、充分楽しめたと言えるのかも知れません。

この流れでゆくと、最後の「春」も、「面白くなぁい」で終わりそうだったのですが、ここはピアニスト氏の貢献が大きくて、これも結構楽しく聴けました。アンデルシェフスキーと言う若いピアニストなのですが、現代音楽で見せたように音は非常に透明だし、演奏も大変良かった様に思います。

演奏会で一番印象的だったのが、アンコールで演奏されたウェーベルンです。研ぎ済まされた感覚の上で音楽を微妙にもてあそぶ様なこの曲は、私には最もムローヴァに向いているようにも思えました。

結局の所、やっぱしムローヴァの古典派、ロマン派の楽曲演奏は好きになれませんでした。どうも、ちょっと真面目すぎる様な気がします。「そうか、自由さ奔放さが足りないのかな」と少し思ってもしまいました。

最後に、ムローヴァは写真通りの美人でした。グラマーじゃなくスリムなのも良いです。この点では全く私の好みです。