湿度70%化計画


さて、別項でも書きました通り、私は数年前にアメリカから組立小部屋式のセラーを買いしつらえました。このセラー、ワインセラー用のエアコンディショナーが付いていまして、夏でも余り湿度を下げる事無く温度を調節出来る様になっています。(と言っても真夏では能力不足のせいか、18度位まで上がってしまいますが)

構造は恐らく冷却によって出た水分を、また排気空気の加湿に使っているだけだと思いますが、それでも湿度65%は常時有ります。

所で今65%と記したその湿度の測定ですが、私は湿度計を、内部が金属螺旋に成っている目盛表示の物、湿球との温度差を取る物を2種、デジタル式を2種、と合計5つも買っていますが、何たる事かその測定値が各々まるで違います。

その金属螺旋の物が65%の時、湿球を用いる物は75%ほど、デジタル式は58%と52%の表示に成っています。いかに湿度の測定がいい加減か良く分かります。ちなみに店で湿度計を買う場合でも、同じ機種でも、そこに数個有れば個体によって10%近く表示が違うことは良くあることです。

以後どれを信じるかに因って精神安定の度合いも違ってきましょうが、割と測定しずらくて常に高湿度の結果となる、湿球との温度差より測るのでなく、金属螺旋で表示する湿度計の表示をとりあず以降の目安とする事にします。デジタル式のは梅雨時期の雨の日で、明らかに湿度が相当高い時でも、60数パーセントしかならないので、参考程度とします。

ちなみに湿度は髪の毛による測定が、一番敏感で良いらしいのです。ちょっと前、その髪の毛を使った湿度計を東急ハンズで見かけましたが、高いので(2万円近くした)購入をあきらめました。

そんな訳で、夏はまぁ良いとしても、冬はやはり乾燥しまして表示湿度が60%を少しきっています。低湿度の場所での保存については、いろんな方の意見でもやはり余り良くはないらしいので、セラーもかなり埋まってきた事ですし、この冬はちょっと湿度を上げる工夫をしてみる事にしました。

具体的には、この湿度計で70%が目標です。題して

「湿度70%化計画」

で有ります。


では湿度を上げるにはどうすれば良いでしょうか?。やる事は簡単で、要はセラー内部で水を蒸発させれば良いわけです。冷蔵庫の様な狭い所ですと、単に水を張った大き目の平皿を置くだけで充分な様です。

前の夏にミニ冷蔵庫を改造し、ワインセラーとして使っていますが、付いていた霜取り受けの皿に(別に張らなくても自然に)水がたまり、かなり高湿度になっている様です。特に殆どコンプレッサーが作動しない冬の時期は、湿度がかなり高いらしく、ワインを入れておくとラベルが湿って濡れてきます。隅の部分とかにカビが生えてきていて、庫内がちょっとカビ臭いです。多分、湿度はほぼ100%近いですね。ワイン専用をうたった保管庫も、(未確認ですが)だいたいの物はは水を張るだけのようです。

ただし、一応体積の大きなセラーの場合は、かなり表面積を大きくして水を張らないと、効果は期待できないでしょう。ちゃんと作ったセラーでは、普通床を砂利などにして、水を撒いて置く事が多いのですが(地下に作ったセラーだと、逆に湿度を防ぐ工夫が必要)、私のセラーの場合には、床に水を撒くのは不可能です。また、容器に水を入れて置くにしても、そんなに水を張って置く場所も有りませんし、もし置いたとしてもすぐ蹴飛ばして水をこぼしたりしそうです。。

それでも試しに場所を取らないようにと、プラスチックのごみ箱を買ってきて、水を入れてセラーの端に置いてみました。もし倒した時にひどい目に遭わないように、中にスポンジを一杯入れまして、水分はスポンジに吸い取らせてみました。

空気との接地面が少ない為、あまり効果は期待して居ませんでしたが、それでも60%は幾らか越えるようにはなりました。でもまだ不十分です。

湿度を上げる積極的な手段として、誰でも思いつくのが、市販の加湿器を使う方法です。広いセラーなんかでは使われているかと思いますが、超音波で水蒸気を作り加湿する方法は、若干問題があります。

昔、あるワイン屋さんの広いセラーで、ワインのボトルをさわってみると、みんなざらざらしているのです。中には白い粉がこびりついています。理由を聴くと、加湿器で飛ばされた水分中の石灰分等が析出するみたいなのです。今、私の所にあるワインでも、そういう白い結晶が一杯ついたボトルが幾らかあります。飲む分には悪くはないのですが、全部が全部こうなってしまうと、ちょっと嫌ですよね。

加温して水蒸気を発生させれば問題ないのですが、セラーの中で温度を上げる設備をするのは、やはりちょっと躊躇されます。ただ、熱帯魚用に水槽の温度を上げる機器も販売されていますので(サーモスタット付き)、それを使えば、割と良いのが出来るかも知れませんが、、。

それに市販の加湿器は水タンクが小さく、もって1日でしょう。最も、セラーが近くで1日1度位は入る様ならばそれは問題ないし、水に「純水」を使う事にすれば(あまり高くないはず)、市販の加湿器を導入するだけで充分事足りますね。私の場合は、セラーは離れに有る事もあり、最低一週間くらいは何もメンテしなくても大丈夫な様にしたいのが本音です。



どちらにしろ、機械を使うのはあまり好ましくないと判断し(改造したり制御したりするのも面倒だし)、何とかスタティックな機構で湿度を上げる工夫をする事にしました。そこで思いだしたのが、以前買った本「How and Why To Build a Wine Cellar(Richard M. Gold, Ph.D.著)」に紹介されていた、加湿の方法です。


左の図の様に、要するに、上部に置かれた水槽から布によって少しずつ水を引き出して、コンクリート・ブロックの上に垂らしてそれを濡らし、加湿するわけです。

私の場合、セラーは組立小部屋なので、ブロックが濡れすぎると床材が腐ってしまうのでまずい事、その水の量の調整が難しい事などから、これをこのままは採用できませんが、このアイデアは利用できます。

もう少し加湿効果を上げる事、それともし供給水量が蒸発量より多くなった場合の水の回収、それと如何に場所を取らない様にするか、等々考えて2つの方法を考えました。
まずは、ウエットカーテン式。水の供給の仕方は水槽からのタオルとして、その水分をカーテン様に張った布地に広げて加湿する訳です。カーテン裾は容器に入っていて(具体的にはプラスチックのごみ箱)、もしあまった水分が有ればこちらに溜まります。

もう一つは、ブロックタワー式。こちらは本の方式と基本的には同じです。同じく水の供給の仕方は水槽からのタオルとして、ブロックをもう少し重ねてよりよい加湿を狙った物。やはり一番下のブロックは容器に入っていて、蒸発しきれない水分はここに溜まります。

どちらにしろ水槽は、セラーの突き当たり壁面上部、左右のワインラックの上に板を渡して、その上に置く事としました。両方式ともその下に設置すれば、場所も殆ど取りませんし、誤って水をぶちまけてしまう事もないでしょう。

水槽は、頻繁に水を補給するのはいやなので、置けそうな中で一番大きな透明プラスチックコンテナを2個、その板の上に置きました。実はそうやって水を張っただけで、湿度が更に上がりまして、65%近くまで上がりました。


さて、実際はカーテン式の方が効率は良さそうですし、丁度不要なカーテン生地が有ってこちらを第一に考えたのですが、カーテンを広げるレールを設置するのが面倒なのと、裾の処理の仕方があまり巧く出来ないので諦めて、ブロック式にしました。



プラスチックのごみ箱の中からブロックを縦に4個積み上げ、上部にスポンジを置いて(一様に水分を供給するため)、その上に水槽からのタオルを垂らします。

後は水の補給量の調整です。水槽の水が多いときと少ないときでは幾らか違いましょうが、基本的には水槽からのタオルの幅で大体の所を決めます。具体的には1/3幅にタオルを細く切って、その本数で、ブロックの3/4以上がいつも湿っているように調整します。

所で余って、下のブロック受けの容器に溜まった水ですが、もし溜まりすぎた場合の排水もちゃんと考えて有ります。バスポンプと言う風呂桶から洗濯機へ水を送るポンプを買ってありまして(千円少しで売っています)、一杯溜まればこれにて排水する予定です。元々、あらかじめそのポンプが入るスペースを考慮して、ブロックと容器を配置してあります。

1、2日でブロックが湿ってきましたが、湿度も次第に上がり、70%をだいぶん越える表示になりました。セラーに入っても、湿度が高いことが感じられます。この所ずっと天気が悪く、外気がそれほど乾燥している訳ではないのでまだどうとも言えませんが、一応は成功です。

数日たって、ブロックの殆どが湿る状況になりました。最初60%を切っていた湿度計が既に75%を示しています。

1カ月ほどして、ブロック受けの容器(プラスチックのごみ箱)に、水が少し溜まっていますが、このペースなら問題ないでしょう。給水の水槽の水も見た目には殆ど減って居ません、少なくても半年はそのままで何もしないで大丈夫そうです。

この時点で湿度計は78%程を示しており、常に低表示のデジタル式も73%を示しています。予想を上回る結果です。

実際やってみれば、結構簡単な設備で湿度が上がりましたね、もっと早くやれば良かったです。