xiphioのワイン雑記帳


ワインのグラスについて(97年12月)


先頃クリスティーズのワインオークションの為に東京に出た折、バカラの新しいワイングラスのシリーズ「オノロジー」の中の、「ボルドー」と「ブルゴーニュ」を買ってきまして、この所その「ボルドー」の方を良く使っていますが、いやいやさすがになかなか良いグラスで大変感心しています。

「こんなワインにはこんなグラスを使いましょうね」とか言う一般的な事は、どの本にも、また最近の雑誌の特集何かにも必ず記載が有るので、わざわざ重複する事はしないのですが、個人的な考えかも知れませんが、グラスって、ワインを楽しむ上でかなり重要なポイントかもしれません。

事、ワインを味わう点に於いては、影響はその形状だけと言って良いですが、それだけでも重要です。

私は個人的には、フランスのドームのグラスがとても好きで、ずいぶん昔、そのドームの大変に美しいワイングラスを東京の和光で見つけて買いました。別に変な模様が彫っている訳では無いですし、カットも無い比較的シンプルと言えるグラスですが、持っている中で(ワイングラスは殆ど一個ずつ、二、三十個持っていますが)恐らく一番美しいグラスと私は思います。

ただこのグラスの形状が、上に開いている形なんですよね。この形のグラスにワインを注いでも、香りがこもらず、香り高く高貴なワインも、全く平板な印象のワインに変わってしまうのには正直びっくりしました。それ以来全く使って居ません。

やはり、香りを逃がさず包み込むようなグラスが良いですね。


で、こんな事は誰も何処にも書かれては居ないのですが、ワインのグラスにも何となく「流行」が有るように思います。

その昔は「チューリップ形」って言われていましたよね、大体。ちょっと細身のが多かった様に思います。


でも実際にレストランなんかで出てくるのは、口にあたる上部が、ほぼ垂直になった、こんな感じのグラスが多かったですね。

この形のワイングラスもあまり悪いとは思わないのですが、最近ではショップでも余り見ない形に成ってしまいましたね。

何年か前、パリに行ったときバカラの本店にワイングラスを買いに行った時、カットや装飾のないティスティング用グラス(向こうの店員がそう言っていた)が2Fに揃っていて幾らか買って帰りましたが、多くがその様な形をしていました。リリースされたのがずいぶん前だからでしょう。


それから、だんだんグラスのサイズが大きくなりまして、10年ぐらい前は、かなり大きなボウル形のワイングラスが良いとされた(高級とされた)様に思います。

その頃のワイン雑誌に「ボトルの半分くらい入るような、大きなワイングラスで楽しみましょう。」とか何とか(何せ昔の事なんで記憶がはっきりしない)書いて有って、「ボトル半分と言ったら凄いなぁ、二人で注いだらそれで終わっちゃうじゃん」と思った記憶が有ります。

確かに大きなグラスにたっぷりとワインを入れると、ワインの赤色がとても目立って、ディナーの食事の時など、テーブル自体がとても華やかに思えました。

それに大きなグラスですと、何だかゆったりした気持ちがしますね。若めのボルドーなんかでは、とても美味しく飲める事かと思いますが、古めのワインにはかわいそうかもしれません。

昔にリリースされたワイングラスのシリーズには、そう言った結構大きなワイングラスがまだ残っていますね。バカラのにもかなり大きいのが有りますし、リーデルのソムリエシリーズ「ボルドー・グランクリュ」と「ブルゴーニュ・グランクリュ」も割と大きめです(買ったのだけど一度も使っていない)。

その頃は、レストランでもそういう大きいワイングラスが良く出てきたのですが、最近は殆ど見なくなりましたね。まぁ大きいと高いし、最近のように皆さんワインを何種類も飲むようになると、洗うのも大変でしょうから。

それに先ほども書きましたが、飲み頃にさしかかったワインは、あまり大きなグラスで飲むとその繊細さがそがれてしまうようにも、私としては思っています。





そして最近では、リーデルのヴィノムシリーズが、形状、大きさ共にまずは標準となっています。

非常に多くのワインバーやレストランで使用されていますね。そう高価で無いですし、確かにとても良いグラスのシリーズです。



典型的なのが、こんな形でして、見るからに良い形をしていますね。

普通私たちが、ワインを飲むためにグラスを、と最初に考えた場合、まずはこのリーデルのヴィノムシリーズの数点を揃えれば充分かと思います。


私はついこの間まで長い間(10年くらい)、ヒュージョンソンのボルドーグラスを使っていました。元々はとある方からの頂物なのですが、最初はステム(手で持つところ)が太めだし、グラスもそう繊細感のある仕上げではないので(バカラ辺りと比べての話です、普通には充分良い出来です)「常用」としたわけですが、結局それが気に入って長く使っていました。

洗っていてグラスを割ってしまう話は良く聞きまして、酔った時は翌日洗う事にしている方も多い由ですが、私はグラスを洗うのが好きで(良いグラスは必ず自分で洗いましょう、楽しいですよ)、例えベロンベロンに酔ってもグラスは必ず洗い、ましてそれを割った事などこの10年間一度も無かったのですが、最近本当に不注意で割ってしまいました。

そのHJのボルドーグラスは何が良かったかと言いますと、その形状です。


大体この様な形をしていましす。最初の見た目は、フォルム自体はあまり美しいとは思わなかったのですが、これが以外となかなか良いのです。

こう言う形のは、どっかで(多分どっかの外国のワイン雑誌で)「チムニー」タイプと書いて有った様な気がしますが、定かではありません。他で使っているのも見たことが無いので一般的ではないですが、なかなか良い名称だと思います。

今回買ったバカラのオノロジーシリーズのボルドーグラスは、どちらかと言うとそれに類する形状の様に思えます。見た感じは、他社のシリーズと比べてあまり目を引かない派手さの無いフォルムかも知れませんが、使ってみますと大変良い感じです。

加えて、バカラならではの仕上げの見事さや質の良さは、手にして飲んでみて、そして洗ってみて本当に良く分かります。洗ったばかりで、まだ水滴の付いているグラスの美しさは、他と比べようが有りません。日本では1個1万円で売っていますが、私には充分それだけの値打ちは有るかと思いました(でもやっぱし高いよね)。

バカラがこういう形を採ったと言うこともあり、今後こういったチムニータイプのワイングラスも増えてくるかも知れませんね。


色々書いていますが、まぁグラスに関しては、色々なのを試してみて、それぞれに自分の好みを見つける事だけで、全て良い様に思います。

例えば私は、ボルドーでもブルゴーニュでも、またその他殆どのワインで(白でも)、そのHJのボルドーグラスを使っていました。結局慣れるとそれが一番良かったのですね。それに、そのヴィンテージから5年未満の、余り若いワインは殆ど飲まなかったと言うのもあろうかと思います。

例えばブルゴーニュでも比較的若いワインなんかは、いわゆる「ブルゴーニュグラス」って呼ばれている物の方が、また若いボルドーでは、ちょい大きめのグラスが、良い様にも思います。

結局の所、グラスについてはワインを楽しむ上では結構大切なポイントなので、有る程度こだわった方が良いのですが、その結論として、どの様なグラスを使うかと言う事については、単純に自分の好みだけで決めてしまって良い、って思っています。