1997年10月 今月の印象に残ったワイン


今年(97年)の6月にニュージーランドに行って、ワイナリーを一杯回ってワインもずいぶん買ってきました(その時の事については、「xiphioのニュージーランドワイン・エトセトラ」をご覧下さい)。

出発前にNZに行くことを知り合いの方に話しますと、「是非、NZの甘口のワインを買ってきて下さい。」と頼まれました。「有るんですかねぇ、有れば買ってきます。」とその時は返事したのですが、何と行きの飛行機の中で既に出てきました。そして実際NZに行ってみると、かなりな種類が出ているんですね。

結局、あっちこっちで3種類、計4本甘口のデザートワインを買って帰りました。

今回、私にリクエストされたその方が徳島まで来られたので、その3種類のデザートワインを持参して、飲んでみました。ワインは以下の通りです。


Coopers Creek Riesling Hawkes Bay Late Harvest 1991



このワインは、クーパーズ・クリークに行った時に買った物です。甘口のワインとは言え、91年なんて言う昔(!)のワインは、どこを探しても無いので、どっかのゴールドラベルを獲得しているらしいこともあり、2本買って帰りました。

クーパーズ・クリークはオークランド近郊に有りますが、これは北島の南北ほぼ中央の東海岸寄りのワイン産地、ホークベイ(Hawkes Bay)で産したリースリングの甘口です。

これは予測していた程甘くなく、酸味もしっかりしていまして、ドイツで言いますとシュペトレーゼ位でしょうか。丁度料理はデザートの果物で、とっても良く合いました。


Martinborough Vineyard Riesling Late Harvest 1996



こちらは、オークランドのワイン専門店にて、「一番良い甘いワインはどれ?」と聞いて奨めれらたワインです。

マルティンボロ・ヴィンヤードと言うのはその名の通り、北島の南側、マルティンボロと言う地域にあるワイナリーです。

この地域のワイナリーでは一番有名でして、シャルドネやピノ・ノワールが、NZの各ワイン本で"CLASSIC"(つまり5つ星ね)の選定を受けてる優良ヴィンヤードです。

裏ラベルの解説によると、Jackson Vineyardと言う畑で、貴腐菌がついたリースリング(39-Brix, 3.2-pH, 11.7g/l-acid)により作られた由で、「トロッケンベーレンアウスレーゼと同クラス」とあります。

先のワインはちょっと別として、これそこ正当甘口デザートワインです。高い粘度、広がる風味と言い、美味しいデザートワインでした。


Vidal Reserve Noble Semillon 1996



ヴィダルと言うのも以前から有名な名前ですが、少し前にヴィラ・マリアと経営が同じになった様です。

ヴィラ・マリア・グループはNZで一番大きなワイン会社で、傘下の銘柄に、ヴィラ・マリア(Villa Maria)とこのヴィダル(Vidal)、そしてアスク・ヴァレー(Esk Valley)と、何と三つも超優良銘柄を持っています。

ヴィラ・マリア、ヴィダルそしてアスク・ヴァレーの各リザーブ(RESERVE)は、カベルネやカベルネブレンド、またシャルドネなどの各種ワインで、ことごとく最高の評価を得ています。

ですから、オークランド空港の近くのヴィラ・マリアに行きますと、なにしろ種類が多いので、自社のワインを売るスペースだけでもかなりなものですし、また見れば見るほど壮観です。そこで見つけたのが、このワインです。

先の2つとは違い葡萄はセミヨンです。裏ラベルの解説によると、やはり貴腐菌のついたセミヨンを用い、収穫時の葡萄の糖度(Brix)は42度という事で、先のマルティンボロ・ヴィンヤードのリースリング(39度)よりも高いですね。

それを味わいも反映しています。そして更に複雑味が感じられまして、やっぱし大層美味しかったです。同じ2本買うなら、こちらをもう1本買っておくべきでした。


日本では普通にはまず手に入れることが出来ない、NZのデザートワインをレポートするのには、単に私にとってテイストが印象深かった事以外に、幾らか理由が有ります。

それは、やはり世の中には美味しいワインは、有名な所以外にも探せば結構ある、ということを改めて認識した事です。私も人から頼まれなければ、「NZの甘口ワインなど、大した事無いのに違いない。」と思って、買わなかったに違い有りません。

我々が今後飲めるワインなんてたかが知れています、それに比べて世界中のワインの何と多彩な事でしょう。知っているテロトリーの中でのセレクションは、はずれが無く安全で、私のような素人には一つの正解手順なんですが、それとは別に色々なワインにトライしてみるのも、またワインの楽しみの一つでもありますね。

因みに上記ワインは全てハーフボトルでありますが、確かどれもNZ$30程であったと思います。しかしそのテイストは、お手軽に作られた物ではなく、ちゃんと念を入れて作られたワインの味わいでした。(もし今度NZに行ったなら、ここらのワインを一杯買って来よう)


幾らかワインをお持ちの方は、その中に「思い入れの有るワイン(ボトル)」と言うのが有りませんか?

私の所には何本かそう言うワインが有ります。昔ワインが好きになって、まだワインはかなり高くて、でもあんまりお金が無くて、迷った挙げ句に買ったワイン、それがそのままもったいなくて飲めなくなってしまった様なワイン、、そのワインのボトルに何か思い出がつきまとって居ます。

秋になって、ワインを飲むには良い時期になりましたので、

Clos Saint Denit 1983 (Domaine Dujac)


を開けました。私には余り良い印象のない83のブルゴーニュです。

このワイン、87年3月に今は無きミツミから買っています。私の所に来て、丁度10年ですね。当時はワインが安くなる前で、1万5千円しています。

私はこのワインを注文する折の、ワインリストをながめている時の事さえ、良く覚えています。最近買ったやつだと、「あれぇ、こんなワイン持ってたっけ?」と思うワインが時々ありますのに、、

その10年の内7年間は、真夏は28度にもなる蔵の中で保管して有りましたし、熱に弱いブルゴーニュなので、本当の所、多分ダメだろうか、と言う気分で開けました。

で、正直私は「ありがとう」と言いたい気分でした、それは「痛んだワイン」では無かったからです。かなり熟成が進んだ色で、力づよさは無いものの素敵なワインです。ただ開栓後30分ぐらいが一番開いていて、その後急速に衰えて来まして、45分で飲むのがつらくなってきました。

ラベルをスキャナーに通すとき初めて気がついたのですが、これハーフボトルのラベルですよね。(容量表示がそうなっていますね)付いていたのは間違いなくレギュラーボトルでした。ブルゴーニュは割とこういう間違いが多いですね。


ワインのクリスティーズ東京オークションを見るために、少し東京に行きましたが、その折りに東京のレストランで知り合いの方数人と食事をしました。今回は、とびきり楽しい食事になりました。ワインは事前に私から送って有りまして、飲んだワインは以下の通りでした。

いずれも、私にとっては、過去に飲んだことの有るワインばかりですが、その時のワインは今までのどの時よりも美味しく思えました。

やはりワインと言うのは、楽しい仲間と、美味しい料理と共に飲むのが最高のシチュエーションであると言うのを、改めて、そして「強く」理解しました。本当にワインの味だって、全然違いますものね。



Ch. Ducru-Beaucaillou 1970

上記リストのワインは、過去に書いたことが有るワインが多いのですが、デュクリュ・ボーカイユ70は書いたことが無かったかと思います。

私も70のボルドーを多く飲んでいる訳では有りませんが、私の経験のなかで何時も飛び抜けて美味しいのがデュクリュ・ボーカイユです。

過去に3、4度飲みましたがいずれも、まだ充分で、複雑で集中力がある素晴らしいワインです。

1970年のボルドーの中でも、ごく一部を除けば、間違いなく最高のワインで無かろうかと思います。