1998年7月 今月の印象に残ったワイン


売るワインが無いのだそうです、、ワインバーの店主との会話でのお話です。

久々に神戸に行ったとき、知り合いのワインバー数件寄ってみましたが、やはり同じ話を聞きました。

ワインブームのあおりでしょう、若いワインしか無いのだそうです。90のブルゴーニュなんかもう何処にも見かけない、と言うことです。そうでしょうねぇ、、以前のストックなんかも、とっくの昔に捌けてしまっているみたいですし、、

「ボルドーでも有るのは、ごく若い94や95あたりばかり、でもそんな若いワイン売りたくないし、、」と言っていました。それで結局、そこら以外の早飲み出来て美味しい地区のワインばかり、と言うことになります。まぁ、ワインバーで飲むには、それはそれでも良いと思うのですが、たまにはボルドーやブルゴーニュも飲みたい気もしますね。さて、今は我慢の時期なのでしょうか?。




Ch. Margaux Non Millesime

世にも珍しい(?)、シャトー・マルゴー、ノンヴィンテージです。PT(ピーター・ツーストラップ)出のワインです。地元の酒屋さんに1ケースだけ入りました。

まぁ、ボルドーの1級ワインで、ノンヴィンテージってのは、未だかつて聞いたことも有りません。そもそも、もし出来の悪い年があれば、村名で売ってしまうか、セカンドラベルがあればそれで売ってしまう筈ですから。


ラベルを見る限りでは、ちゃんと、"NON MILLESIME"と記載されており、印刷忘れとか、何かの間違いでは無いことが判ります。こういうのの偽物を作ってもメリットは有りませんから、偽物と言う可能性はまず無いですね。

一体どういう経緯でこういうボトルのワインが作られたか、詳しいことは判りませんが、酒屋さんがインポーターに聞いたところでは、恐らく中身は65と66であろう、と言うことです。

事実1965年のシャトー・マルゴーは作られていませんから、もっともらしいですし、ボトルを見る限りでは大体そのあたりの時期のワインであると予想できますから、結構信憑性は有るかも知れません。

とすると、当時セカンドラベルは無かったですから、出来の悪かった65のボトルは作らなかったけれど、66は良いヴィンテージだったので、(そんなに出回ってないので)65の内良かった一部のみ66と合わせて、こんなワインを作ったのでしょうか?

で、肝心のお味は、ですが、良かったです。古いのでさすがにボトル差が有ったらしく、とても良かったとも聞きますし、薄かったと言う話も聞きました。また、酸っぱくてもう飲めなかったボトルも有ったらしいです。

その、死んでたボトルを開けた方からの要請で、私のを飲むことにしました。私が開けたボトルは、さすがに色も少し薄くなっていましたがクリアーで、健全でした。開いたブケがかぐわしく匂う、この時代のマルゴーらしい優美なワインです。

それでも、デカンタ後1時間しても結構しっかりしておりまして、とても良かったです。このボトルのワインでしたら、マルゴーの64とか66とかのラベルがついていても、納得してしまうと思います(それより美味しいかも)。

一つ気になったのが、このラベルです。剥がそうとお湯につけましたが剥がず、結局透明粘着フィルムで取りました。ボルドーでは概ね80年以前のワインはお湯で簡単に剥がれます、60年代なら絶対に大丈夫です(多分)。ボトリングしたりラベルを作ったりしたのは、60年代でも、ラベルを張って出荷したのが80年以降と言う可能性が有ります。「ノン・ヴィンテージ」と言うからには出荷時が飲み頃な訳で、このワインの飲み頃として80年以降が選ばれた、と言う事でしょうか。

因みに、コルクは30年程経っていると見て違和感の無い物でしたし(途中で折れてしまいました)、ちゃんとシャトー・マルゴーと入っていますが、ヴィンテージは書かれていませんでした。




Bottiglia Particolare 1993
Castello di Verrazzano

先月も登場しました、トスカーナはヴェラッツァーノのワインです。ラベルが面白いですね、これは布地のラベルです。

ヴェラッツァーノのワインの全ラインナップを知りませんし、ラベルにも裏ラベルにも詳しい事は書いてなかったのですが、このVdTのボッティグリーア・パルティコラーレは、飲んだ感じから、ほぼ間違いなくサンジョベーゼ100%のワインでしょう。

飲んだ感じは、まだとても酸が高いです。まだ飲み頃ではないのか、ボディが弱いのか私には良く分かりませんが、残っているもう1本はまだ暫く置いておこうと思います。




Ch. Ducru-Beaucaillou 1990

ボルドーワインが高騰を始める数年前までは、日本では逆に昔に比べてワインがどんどん安くなっていまして、当時近くの酒のディスカウンターでも結構ワインを入れていました。そこで、このワインを5600円で売っていましたが、当時はどうも買う気がしませんでした。

評価もそれほど素晴らしいものではないし、何せ、東京のデパートのフェアでは、90のラトゥールとかでも1万円位で売ってた時代ですから、、

その内にワインが急に高くなって、ふと気がつくと、いっぱい売れ残っているこのワインがえらくお得に思えて来まして、ついつい4本買いました。でも、誰でも思うことは同じらしく、次に行ったら、全然残ってませんでした。

先に書いた通り、このワインの評価は、どうも芳しいものでは無いです。理由は、多くのボトルで痛んだような変な臭いがついているらしいのです(大丈夫なのも有るらしい)。パーカーさんの最近の評でもそうですし、他の評論家の評も、変なボトルが多い、と言う点で一致しています。(最も、これは90だけでなく、88、89に共通している様です)

でも、ちょっと急に心配になりまして、1本開けてみることにしました。(こう言うリスクのあるのは、誰かとは開けられないので、一人で飲みました)。

結果は、、OK!良いワインでした。飲み頃はもう少し先でしょうが、深く凝縮した香りが印象的です。まだまだタイトですが、時を経るに従って、見事に開いてくるかと思います。

変なカビ臭い香りも、特に気になる程では有りませんでしたし(しかしそう言われると、そんなカビの臭いも少しするような気もしました、気のせいかも知れませんが)、痛んだ風も無かったので、ひとまず安心です。他の3本が同じとは限らないけど、少なくても希望は持てますね。




Gevrey Chambertin Vieilles Vignes 1991
Bernard Dugat

「デュガ」と言えば、ブルゴーニュのドメーヌでも、やはり特別な思いが有るのは私だけでしょうか?。ただし、幾つかの「デュガ」があって、私もその関係を知りません。

パーカーさんの「ブルゴーニュ」では Pierre Dugatだけが取り上げられて居ますが、主に89、90のブルゴーニュの評論が載っている3版のバイヤーズガイドでは Claude et Maurice Dugatと Bernard et Pierre Dugatとが載っており、91、92の評論が載っている4版ではやはり Claude et Maurice Dugatともう一つが Pierre Dugatとなっています。

それでもって、この91のジュヴレイ・シャンベルタンのラベルでは、Bernard Dugatとなっています。91年ぐらいから、Bernard et Pierre Dugatが、Pierre Dugatと Bernard Dugatに分かれたのでしょうか?。

最近の人気は Claude Dugatです(次のアンリ・ジャイエである、と書かれていたのを見たことが有ります)。時折リストでは見かけますが、殆ど買えないですね。デュガは少し前まではネゴシアンにみんな売っていた位の小さなドメーヌの様で、生産量も少ないのでしょう。

期待を込めて、94年に買った、91の単なる村名ワインを今まで飲まないで寝かせてありました。

極めてクリアーな色で、一口飲んだときから、フレッシュで綺麗なチェリーのテイストがしまして、まだまだ元気なワインでした、果実味が豊富で美味しいです。樽からのバニラも結構あります。

ただ、開栓後暫くしても状況は余り変わらず、テイストは色のように結構クリアでストレートで、確かに美味しいワインですが、深みとか複雑さにはちょっと欠ける恨みも有ります。でも91の村名ワインですから、無い物ねだりかも知れません。(買ったときは安かったし)

このクラスとしてはとても良いワインですね。もうちょっと置いて於いても面白かった気もしますが、逆にもう飲んであげて良かった気もします。こう言うところは経験の少ない素人では判りません。




Ch. Batailley 1985

一人で酒を飲むのは極力止めていたのですが、その日は色々あって、夜はボルドー。これは1992年に地元のデパートで私が買ったワイン、あれからもう6年ですか。

数年は空調無しの夏を蔵の中で過ごした筈ですが、極めて健全、昼間の出来事とは違って、こちらはがっかりすることは有りませんでした。

開けたときの印象はかなり肉厚な筋肉質的で、いわゆる「噛めるような」感じだったのですが、1時間ぐらいするとかなり滑らかになってきました。色はまだまだ濃く、やっと熟成に達しかかった、と言うところでしょうか。バタイエは初めて飲むのですが、結構「ポイヤック」していました。

このワインはかれこれ1年以上も、立てて置いてあったのですが、見たところコルクは上の方まで弾力があり、普通に寝かせて保存してあっとのと同じように下の方は水気を含んでいました。

クレーマーさんが本で書いていたように、この位のワインなら、立てて保存してても大丈夫そうですね。でも、ショップとは違い、個人のセラーは無理に立てておく必要もないし、寝かせた方が多く置ける事もあり、結局は何も変わらないのですが。




Nuit Saint Georges "Les Haut Poirets" 1992
Jayer-Gilles

ジャイエ=ジルの92です。アンリ・ジャイエほどでは有りませんが、ジャイエ=ジルのワインも高価ですね。2年半前、ワインがかなり安かった時期に買っていますが、それでも、あまり評価の高くない92ヴィンテージの、1級畑でもないこのニュイ・サン・ジョルジュが7千円もしています。

この"Les Haut Poirets"と言う畑は、1級畑で"Les Poirets"と言う畑があるんですが、そのちょっと離れた上の方ですね。

しかしながら、やはりブルゴーニュは作り手次第ですね、これは良いワインでした。深くて、特別に凝縮している訳ではないですが、きちっとした構成をもった素質の良いワインです。

上で書きましたデュガのジュブレイ・シャンベルタンと比べると、デュガのストレートな果実味はしませんが、より複雑で、私は断然こちらが好みです(実は、デュガとは作り方がかなり違うのです)。丁度飲み頃を迎えていまして、飲んでいてとても楽しかったです。



7月には、明石大橋の淡路側のたもと付近に知り合いのペンションが有るので、友人数人を集めて、「架橋記念岩屋ワイン会」をしてみました。そのペンションは明石大橋と対岸の神戸が綺麗に見える山の上に有ります。

ワインは全て私の提供でしたが、印象に残ったワインも多くありました。当日のワインリストは以下の通りです。

確かに、オーブリオン75やラ・ミッション70は当然ながら、凄く美味しかったです(私の好みですし)。驚きは67のニュイ・サン・ジョルジュです。PT経由のワインなのですが、ブルゴーニュとして余り良くない年の67において、実に見事な、熟成したピノの美質の全てが出ているようなワインでした。少なくても私は大感激物でした。

期待したダンの86ですが、これは期待以上の恐ろしいほどのワインです。極めてスパイシーな香りの中に、底が見えない深さを感じました。熟成にはまだ遠く、これからの成長が楽しみです(まだ数本持っているので)。これらはまた後日、少人数でゆっくり飲んだ時に、その報告をしたいと思っています。