釜場 中釜、上げ釜、冷やし釜 煮詰めと撹拌冷却

澄ましを経た砂糖黍汁は、引き続き中釜、そして上げ釜と炊きあげられます。中釜は単に煮詰め釜で、上げ釜はその名の通り仕上げの釜で、この釜で煮詰め上がりを見て、「よし上がり」と言うことになれば次の冷し釜に移され冷却作業に入ります。

和三盆糖の炊き上げは釜場作業の中で最も重要であるにも関わらず、温度計も糖度計も一切使わず、かき混ぜる竹棒からのしたたり具合と、あとは勘だけで上がりを判断します。ここはこの様に職人技的要素が大きく、通常最も経験を積んだ者がその役にあたり「主炊き」と呼ばれます。
砂糖を絞る締め場から釜場までは一連の流れ作業になるので、「主炊き」はまた締め場の責任者と協議して、その日一日の作業全体をも取り仕切ります。上記写真で、中央で釜を炊いているのが「主炊き」、左の女性が「中炊き」です。

上記写真の釜場風景では、左からステンレス製の釜が3つ、一番右に木製の釜が見られると思いますが、左からの2つが中釜、主炊きが竹棒をさしているのが上げ釜です。木製の釜が冷し釜で、これには冷却専用の釜であり加熱設備は有りません。そのかわり撹拌装置が据えられていて、撹拌しながら自然冷却します。

単に煮詰めて冷せば砂糖が取れるかと言うとそう簡単ではなく、砂糖を作る場合「結晶化」と言う過程が必要です。 丁度良い大きさの砂糖の結晶を得るには、実はそれなりの手順が必要なのです。煮詰めたまま、そのまま冷却しますと、砂糖の結晶があまり成長せずに半ば水飴状になってしまい、 後の精製作業において、砂糖があまり取れないと言うことになってしまいます。 その為に通常の砂糖の場合と同じく、煮詰め上がりの最終段階で、まず少量、種となる砂糖(上白糖)を加えます。そうすると糖液の中でそれが核となり結晶化が一気に進みます。

その後、結晶化が均一になるようにしながら少しずつ冷却するのが、冷し釜の役割です。 丁度良い冷却過程の、古くからの経験則が、写真の木製の釜と撹拌冷却です。ちなみにこの木製の釜は時折修理はしますが、30年以上同じ物を使っています。 10年ほど前、これをステンレス製の釜にした事がありますが、どうも上手く仕上がらないので、元に戻した経緯があります。

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